可笑しな小屋

この本も家自体の全体像が見えない物件が多い。写真家だからなのか、必要以上に暮らしをアーティスティックに見せようとしている印象がある。おかげで家本体とはあまり関係ないモノの寄りの写真が多く、肝心な家屋のディテイルの紹介がお留守になっていて実にもどかしい。こういう本の場合そこに住む人が何を作って生業としているかはさほど重要ではない。どんなバスルームか・どんなキッチンシンクを使っているか〜の方が知りたい事項だ。同じような本を何冊か出しているようだが、この著者が本当にこういった物件を好きなのか、感心しているのか、そしてそれらを真剣に伝えようとしているかが少々疑問。勿論良い写真もたくさんあるので星は３つにしたが、今後はもっと物件数を減らしてその分それぞれを細かく丁寧に見せたまえと著者には進言したい。最後にタイトル。「可笑しな」は、果たしてこの本に相応しいだろうか。読んだ限りでは至って素敵な小屋の集大大成、少なくとも“可笑しく”はない。「小屋」自体が多少ネガティブな意味をはらんでいるので、そこに可笑しなを付けてしまったらまったく珍妙な建物と捉えられてしまうではないか。編集がきちんと内容を熟知し、しっかり売ろうという意思があったのなら少なくともこの形容はなかったように思う。シリーズの流れで、ま、これでいいだろう的な仕事の雑さを感じてしまう。とはいえ、登場する小屋はどれも甲乙付け難く素敵。そういう意味では良書です。